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『転載による現代詩』『クロラ』『小倉拓也』

2010-06-20

山本陽子について

23:25 | 山本陽子について - 『転載による現代詩』『クロラ』『小倉拓也』 を含むブックマーク はてなブックマーク - 山本陽子について - 『転載による現代詩』『クロラ』『小倉拓也』 山本陽子について - 『転載による現代詩』『クロラ』『小倉拓也』 のブックマークコメント

酒と詩と推理小説を偏愛し、耽溺し、死んだ詩人山本陽子。彼女が好んだ小説が推理小説であったことはたぶん大切なことだ。意味に対する嫌悪。散々語られてきたそのことに推理小説探偵小説)が示した態度について。今、もうちょっと語っても良いんじゃないかな。詩人が。



上の文章はさっき僕がTwitterに書いた文章です。

そして下が山本陽子の詩。



よき・の・し


あらゆる建築をうちこわし、

いかなることばを

あとにのこすな、

すべてをもえつき、

もやしつくせ、

全けき白さをひっさらって

        死のとりでをひとこえよ

よきをひだにふくみのみ

さまざまなる夜をはらめ、

       死のこちらには死がひそみ

       種のうちには絞られた精気、

       濾過した夜に

       血清があった

やさしく勇気みついかりを決して決して

あとにおとすな、

よきのうちに苦しみがあり、

苦しみのあいだに割れ目あり、

黒き旋転に露しとろうと

決して それをそれとおもうな、

       死がすべてをけし去っていて

        全けき ものつれ去るとも

       飛ぶときには

      軽ろきがいた、

     残した埋(も)れ木は 焼ぽっくいで

    残した種は 鳥がついだ

あとをうがち、あなあしため

したたりおとした数千の、

透明な肉をすいつくし、

決して決して

環えるな

いのち白い霧吐きだすたび

星をえて 光りしない

血を亡脈に黒ずませ

こころのかたどり、雲をちぎり、

冷気ちらし、空を去らす


突破するたびに数千の綱が壁をつくった

       壁はからみ しとねつき

       頭のなかに 垂直がある

       光こごらせ 結晶がある

       にごいもてはなつ海をよび

       海泡のつぶて くだけちる


かつて死んだひとりの男がいて

おまえに置言(ごと)を手渡したら

その言葉を地に埋めよ

かつてすべてが刃向かっていて

おまえの仄を噴き出したら

汗に黒さびた金属(かなもの)を

ずきずきと踏み 風にはなて

     かつて死んだひとりの男がいて

     かってにしやがれと呟いたとき

     かってなき塩の結晶が造った

     朝の食卓にピケルスがあった

     かつてあったひとつの種が

     身をやくたねをもとめたとき

     木々は交れり火花散した

かつてある禁忌が衣、ばさりおとし

     かってなきことについて

     かくてかってにあるときには

魔術がひとをかなしばりする

いまは

いまわのきれなるかた、

僧侶の裸体に手濡れつくし、

身体にこれ小鐘がなると、

あけ方に骨きしむ勤行がおこる、

しぜんてきしぜんがしぜんするあいだは、

ひつぜんすべては、

おまえがうみだした卵ばかりだ


      あらゆる魔術を変身しつくし

      いかなるひとも

      あとにのこすな

      あらゆる大陸をわたりはなら

いかなるもの、いかなるあし、いかなる、は

をも 露に尽きさせ 冬にくだけ

あとに あとをのこすなら

おまえは死を譲り渡す、

あとにのこしてきたものが

無をおまえに譲り渡す、

廃跡は、いつ いかなるともにあった、

それは いつ いかなるときになかった、

それは いま だけにある

かつて現在というものがあるときに

廃墟は未来のものであり、

かつて現在というものがあったあいだ

過去は未来の廃墟であり、

かつてなかった過去の過去は

いま だけにある、

死のむこうにはなにがあるか

死のむこうにはなにがないか、

なくてあるものは

いま だけにあり

死は生のうちにひそみ、

無をおまえに譲り渡す

否、やさしく勇気あるいかりを決して

決してあとにおとし、あるものとなしてはいけない。

冷却したすべて

というものには

    死の数否ひそみ

    冷い凝乳に

    悪はうせる

朝の立売りには昨日という、

いまわの過去が巻きパンとともにやってきて

さらばということばをいくらかだけはかせ、

夜の冷気までに死はちかんしていた

決して決して

あとをおとすな、

あとに、

全けき白さをひっさらって

        死のとりでをのりこえよ

もし、ということばはらむなら、

決して決して

ならばとは

いうな、

もしをもしものものからやかれよ





この人について、何かを言わなくてはと思う今日この頃です。

ゲスト



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